5次試験は、飛行適性検査だ。
当時は実際にセスナを操縦させてもらえた。それだけで、この試験を受けた甲斐があると思えるような体験だった。
試験会場は首都圏と関西圏が選択できた。首都圏在住にもかかわらず、ボクは関西を選んだ。先に合格していた大学の同期からのアドバイスがあったからだ。
「関西にしたら、羽田―大阪の飛行機にタダで乗れるぞ」
その一言だけで関西を選ぶのだから、ずいぶんいい加減なものである。
2泊3日、3人の受験生
試験日程は2泊3日だったと思う。初日は移動して前泊、2日目と3日目が飛行適性検査という流れだ。
同日に試験を受けたのは、ボクを含めて3人だった。ここまで来ると、かなり絞られてきた感がある。初対面の2人と挨拶を交わし、朝8時半に迎えのワゴン車に乗り込んでローカル空港へ向かった。
午前中はセスナの一通りの操作手順と、操縦桿をどう動かしたら機体がどう動くかについての講義を受けたと思う……が、記憶が曖昧で申し訳ない。
午後は飛行機に3人が乗り込み、上空へ。左席にボク、右席にライセンスを持った飛行教官、後部座席にエアライン現役機長の試験官が座った。ボクの一挙一動を観察している。
何をやったかは、全く覚えていない。
「明日は3人で協力して準備してください」
一日が終わると、3人の受験生が集められてこう言われた。
「明日は上昇旋回と降下旋回をやってもらいます。本日習ったことを参考に、3人で協力して明日の科目に備えてください」
この言葉は、ボクに不思議な感覚を与えた。
学校ではずっと競争してきた。大学受験も自分以外はライバルだった。今回の5次試験だって、他の2人はライバルのはずだ。それなのに試験官は「協力しろ」という。
「なぜだろう……」
大きな疑問を抱えたまま、ボクは送迎バスを降りた。
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次回は5次試験の後編。夜の勉強会と、最終日のフライト——そして試験官のK機長との思わぬ出来事について書く。
〔つづく〕