試験当日の朝、3人の受験生は全員、送迎車の来る15分前にロビーに集まった。
前日、指定された時間ピッタリにロビーに降りた3人は、すでにそこにいた運転手を待たせてしまっていた。翌朝に飛行場でK機長から、静かながらも厳しい口調でそのことを指摘された。翌日以降に同じ過ちを繰り返すような人間はいなかった。
夜の勉強会と自信喪失
前夜、3人のうちのひとりの部屋に集合して、その日の講義やそれぞれのフライト体験で得たことのノートを見せ合いながら、翌日の課題に備えた。
ボク以外の2人は関東の名門私立大に通っており、5次試験に対しても用意周到に準備してきた様子だった。ボクの知らない専門用語を駆使し、先に受験した人からの情報をもとに「何が肝か」を自信満々に教えてくれた。
ボクは内心こう思った。
「終わったな……」
3次元を相手にする飛行機の操縦を、一晩で習得できるはずもない。内定している大学の同級生から何一つ情報を得ていない——いや、得ようとする努力さえしていなかった自分を、つくづく恨みながらその日は床に就いた。
最後のフライト
最終日、3番目に飛び立ったのはボクだった。
他の2人はすでに課目を終えて、すがすがしい顔をしている。「合格」という文字はもうボクの頭の中になかった。おそらく一生に一度の経験となる今日のフライトを、せめて思いっきり楽しもうと、半ばやけくそな気分でセスナに向かった。
上昇旋回と降下旋回がうまくいったかどうか、全く覚えていない。
ただ、帰投する経路で関西の街並みを右席の飛行教官が説明してくれたこと、そして快晴の空から眼下に広がる街並みの壮大さに、大きく心を動かされたことだけは覚えている。人生最後だと思っていた3日間の体験が、幕を下ろした。
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次回は、試験官のK機長との帰り道。機内で交わした会話が、ボクに「合格」の2文字を予感させることになる。
〔つづく〕